毎年恒例の平島探索に行ってきました。早朝、フェリーが口之島へ近づくアナウンスで起床。機材を準備してフェリーの甲板に出ました。北上するオオミズナギドリの群れを遠目に見ていると、数羽のカツオドリがフェリーに伴走。これがこの航路の日常風景で、1年ぶりに戻ってきた実感が湧きます。海が凪いでいるので、カツオドリのトビウオ漁が観察しやすい条件でした。カツオドリはフェリーに驚いて飛び出すトビウオを目ざとく見つけ、滑空して捉えます。その瞬間を狙って飛翔撮影しました。

年々渡りが早まっているという話を聞くし、晴れの日が続いていたので、鳥がいなくて空っぽなのではと不安を抱えながら島へ入ります。お世話になっている友人夫妻と山海留学寮の寮生たちに挨拶し、早速探索へ。1年ぶりにアカヒゲの鳴き声を聞きながら歩いていると、すぐにキビタキやオオルリが出て、空っぽではないことを示してくれます。その後、大ベテランのOさんに再会し、ハイイロオウチュウが出ていることを教わって観に行きました。私にとっては初めて観察する鳥です。

この観察地がとても濃い場所でした。ハイイロオウチュウを観察する視野に、ヨタカがとまっているのです。その周囲をキマユムシクイやキビタキ、コサメビタキ、オオルリがうろうろしているし、サンコウチョウが何度もやってきて、目の前でひらひら飛び回ります。アカヒゲとカラスバト、ズアカアオバトの鳴き声がBGMで、遠征中この場所でコノハズクが2回鳴きました。この初日の展開が今回の遠征で最も濃い状況でした。
初日で多くを獲得できたので、翌日以降は気持ちにゆとりをもって焦ることなく探索に集中できました。クロウタドリやムギマキ、変わったムクドリ類など新手も現れましたが、とにかく終始サンコウチョウがよく現れたのがとてもうれしく、印象的でした。同一個体もいるとは思いますが、5日間で30回ほど発見しました。しかもすぐ目の前とか、頭の上が多いのです。近すぎて600mmレンズでは尾羽が入りきらないので、縦位置で撮影する場面も多数でした。3年分くらい観察したような感覚ですね。私のいちばん好きな鳥はサンコウチョウなので、うれしい機会となりました。

すっかりお腹いっぱいですが、探索の手は緩めません。いろいろな鳥を観察したので、ご新規さまにはなかなか出会えませんでしたが、最後に見つけてしまいました。空をふわっと飛んでいく数羽の小鳥。シルエットからホオジロ属だとわかります。とまった樹は風で揺れますが、シマノジコが見えました。その後、群れは遠くへ飛び去ったので見失ってしまいましたが、草原生の鳥なので降りるのはグランドか校庭に違いありません。見当をつけた場所を慎重に確認してみると、見つけることができました。


今回も充実した観察ができ、最高に楽しい島旅と鳥見になりました。ただ、楽しいだけではなく、
考えさせられることもありました。私は「観察図鑑」を出版しているくらいですから、鳥たちの生態に注目して観察しています。島に残された自然が、渡りで疲れている鳥たちを支えていることが今回もよくわかりました。鳥たちは海を越えて長い距離を飛び続ける疲れを島で休め、エネルギーを補給します。飛翔写真を撮影してみると、しばしば虫を捕食する場面が写っていました。バーベキューをしていると、しばしばガがお皿や飲み物に飛び込んできます。このことがとても重要なのです。僻地の島は未開発で、手つかずに近い状態で自然が残されています。緑多く虫が豊富な島は、渡り鳥たちの拠り所。もし開発してしまったらと思うとぞっとします。もしかしたら、渡り鳥にとって最後の砦かもしれない離島の自然をこれからも観察と撮影を楽しみながら見守っていきたいと思いました。
今回の観察種 ※下線は初めての観察種
1.ヨタカ、2. ホトトギス、3. ツツドリ、4. カラスバト、5. キジバト、6. ズアカアオバト、7. バン、8. ヤマシギ、9. タシギ、10. オオミズナギドリ、11. カツオドリ、12. ミゾゴイ、13. ゴイサギ、14. アカガシラサギ、15. アマサギ、16. アオサギ、17. ダイサギ、18. チュウサギ、19. コサギ、20. カラシラサギ、21. ミサゴ、22. アカハラダカ、23. コノハズク、24. ヤツガシラ、25. ブッポウソウ、26. アカショウビン、27. サンショウクイ、28. ハイイロオウチュウ、29. サンコウチョウ、30. アカモズ、31. ハシボソガラス、32. ハシブトガラス、33. ヒヨドリ、34. ツバメ、35. コシアカツバメ、36. ウグイス、37. キマユムシクイ、38. センダイムシクイ、39. エゾムシクイ、40. メボソムシクイ、41. セッカ、42. メジロ、43. ギンムクドリ、44. ムクドリ、45. シベリアムクドリ、46. カラムクドリ、47. マミジロ、48. クロウタドリ、49. クロツグミ、50. シロハラ、51. アカハラ、52. アカコッコ、53. コサメビタキ、54. オオルリ、55. アカヒゲ、56. キビタキ、57. ムギマキ、58. ニシオジロビタキ、59. イソヒヨドリ、60. ツメナガセキレイ、61. キセキレイ、62. ヨーロッパビンズイ、63. ビンズイ、64. アトリ、65. コイカル、66. ミヤマホオジロ、67. シマアオジ、68. シマノジコ、69. シベリアアオジ