24回目の井の頭自然さんぽは、秋の野鳥観察会。主催者、参加者の祈りは天気予報の傘マークを消し去り、青空も広がる秋の行楽日和となりました。ただ気温が高めなのは、天候不順の影響が随所に出ていることを見ているので、決していい気がしません。今回の観察会では、温暖化についても話をしようと考えていました。環境を含めて野鳥をしっかり観察することで、温暖化の影響を実感できるからです。
会開始前、上空でカラスとツミのバトルが展開され、観察が始まりました。今回は初めての参加、初めての鳥見という親子が数組いましたので、双眼鏡の調節から使い方のコツまでくわしく説明しました。参加者が30人いましたので、2つのグループに分けて行動しました。
小学生が多かったのですが、熱心に観察していました。井の頭池では、数が増えてきたカモたちを中心に、この時期ひな連れのカイツブリ、この時期巣をつくっているカワウ、バンとオオバンなどを観察。なぜ、カワウが一年中繁殖するのか、子どもたちに考えてもらいながら、その答えを共有。その知識は眼前で現実として展開されました。カワウが巨大な魚を捕らえて、飲み込もうと四苦八苦していたのです。さすがにこの獲物は大きすぎたようで、カワウはあきらめました。少し若い鳥のようでした。
こっそり隠れていたゴイサギにアオサギ、ときおり飛ぶものの表に出てこないカワセミ、不意に飛んできてやぶにとまって何かを食べていたキセキレイ2羽など充実した観察をしたあと、池のほとりの木の梢でアオジを確認しました。今季初認でした。カワセミも期待に応えて、表にとまりました。
その後、林へ移動して後半戦。子どもにとっては、池の鳥よりもはるかに難しい観察です。ここでも鳥の存在に気づくためのコツを伝えて、一緒に実践しました。幸いにもシジュウカラがよく眼前に現れてくれたので、子どもたちも双眼鏡で捉えることができて喜んでいました。その後、眼の前の木にアオゲラがとまってくれて、しっかり観察することができました。アオゲラの大サービスに、参加者全員が大喜び。
鳥合わせのときに、天候不順による凶作の話をしました。エゴノキがまったく実っていない。秋にエゴノキの実を好むヤマガラが、例年なら得られる食物を得られない状況です。ムクノキも実が少なく、熟していない。このことは、渡り鳥のマミチャジナイ、アカハラやシロハラ、ツグミのほか多くの鳥が好み、秋冬の食物になる実が少ないということです。この2つの植物だけでなく、ウメやサクラ、キンモクセイなど、私が気づいただけでも数種の植物に天候不順の影響が見受けられます。くわしく調べれば、もっと深刻な状況が浮き彫りになるでしょう。
温暖化で気温が上がって天候不順になることは、体温調節できる鳥類にとって身体的には直接問題ありません。しかし、植物が大きな影響を受ける結果、鳥類にとって重要な食物である実や昆虫が減るというもっと大きな問題があるわけです。温暖化は一人の力でどうこうできる問題ではありませんが、みんなで知恵をしぼり、力を合わせることで改善できることがあるかもしれません。野鳥観察を楽しみながら、環境の変化にも気づき、意識して考えたいですね。そんな話をして会を締めくくりました。
今日の観察種
1. オカヨシガモ、2. ヨシガモ、3. ヒドリガモ、4. マガモ、5. カルガモ、6. ホシハジロ、7. キンクロハジロ、8. カイツブリ、9. キジバト、10. アオバト、11. カワウ、12. ゴイサギ、13. アオサギ、14. バン、15. オオバン、16. ツミ、17. カワセミ、18. コゲラ、19. アオゲラ、20. オナガ、21. ハシボソガラス、22. ハシブトガラス、23. ヤマガラ、24. シジュウカラ、25. ヒヨドリ、26. ウグイス、27. エナガ、28. メジロ、29. ムクドリ、30. ジョウビタキ、31. キビタキ、32. スズメ(住宅地で確認)、33. キセキレイ、34. ハクセキレイ、35. カワラヒワ、36. アオジ、37. ドバト、38. ホンセイインコ