井の頭自然さんぽfn.005「春の鳥たち」

イベント

5回目の「井の頭自然さんぽ」は実際には3回目。コロナ禍で過去2回中止になったからです。今回も前日に緊急事態宣言が発出されましたが、実施期間が翌日からだったことからぎりぎりの開催となりました。今回の観察テーマは「春の鳥たち」。4月下旬から5月上旬にかけては身近な公園での鳥観が最も楽しい時期です。渡り途中の夏鳥を見つけて観察することをメインに、3種の留鳥の子育ても観察。そこから見えてくる人と鳥の関係を紹介する企画を考えました。

晴天の井の頭公園に集まった参加者は23名。スタッフは手分けしてコロナ禍対応し、検温、消毒のあとで受付という流れで対応しました。双眼鏡の貸し出しを希望する参加者が8人いましたが、KOWA(興和オプトロニクス)さんに協賛してもらい、初心者でも使いやすくてコスパが高いYFII30-8とSV25-8をお借りしました。http://www.kowa-prominar.ne.jp/product/#index_binoculars

参加者を3チームに分け、双眼鏡の使い方を簡単にレクチャーしていると上空をアオサギが悠々と飛んでいました。練習が終わったところでいざ井の頭池へ。池では現在7つあるカイツブリの巣を1つひとつ観察して周り、ここ井の頭公園での人との距離の近さの理由や住宅難について紹介。夏鳥は上空を飛ぶツバメくらいでしたが、途中カワセミが飛んでいきました。

子育てにいそしむカイツブリ

カワセミのオス

そして池まわりでもう1つ紹介したかったのがカワウの繁殖です。昨年初めて繁殖したカワウは今シーズンも子育てを開始。今回も往来の多い七井橋の真上に4つがいが巣を構えました。

カワウの巣は七井橋の真上に4つ!

前シーズンは糞を浴びたという苦情が20組ほどの公園利用者から寄せられていたので、管理者である東京都西部公園緑地事務所の担当者は悩んだようです。カワウは在来種の野鳥ですから繁殖することを問題視するのはおかしいし、子育ての様子を見るのが楽しみな野鳥愛好家や来園者は多数います。一方で生活道路と観光で利用者がとても多い七井橋の真上に巣があるので、利用者がカワウの糞を浴びないようにしなければならない、というところで折り合いをどうつけるか。私は以前、カワウ研究で有名な加藤ななえさん(NPO法人バードリサーチ)に協力してもらい、管理者と協議してもらいました。管理者としてはヒト優先か、営巣しているラクウショウとポンドサイプレスを剪定し、糞の影響の出ないような木に引っ越してもらうということを検討したそうです。果たして観察会の下見のときに剪定のお知らせが掲出されたので、要は巣を落とされてしまうものと思っていたのですが、管理者は橋と園路の真上にあたる枝のみを剪定し、4つの巣はそのまま残すという形にしました。これはとてもいい折り合いのつけ方で、人と鳥の共生の1つのお手本だと感心しました。糞を浴びてしまう人ができるだけ少ないことを祈ります。

池から林へ上がり、いよいよ森林性の夏鳥を本格的に探しましたが、ムシクイ類の鳴き声も聞こえませんでした。唯一、クロジを数個体観察することができましたが、暗く茂っている環境なので初心者にはなかなか難しい対象でした。3種目の子育て紹介はオオタカ。井の頭公園では、犬の散歩の人たちがしょっちゅう行き来し、子供たちが野球やサッカーを練習し、高齢者がゲートボールを楽しむ広場の真ん前にオオタカが堂々と巣を構えています。昨年も公園利用者が多く行き来する場所で子育てを成功させましたが、今回はさらに開けた場所です。オオタカは目の前にカメラマンがいるにもかかわらず繁殖をやめず、交尾を繰り返して産卵し、交代で抱卵しています。もはや人は危険ではなく、むしろカラス類などの天敵よけに利用できると考え、あえて人前に巣を構えたというオオタカの戦略が汲み取れます。観察会でオオタカの子育てを見せるということは従来考えられませんでしたが、都市における野鳥の分布や生態はどんどん変わっているのです。いつまでも古い常識にとらわれず、発想を変える必要があります。

オオタカは人がいてくれることで安心?

今回の観察会はタイミングが悪くて花形の夏鳥には出合えませんでしたが、一緒にゆっくりと野鳥観察を楽しめました。そして3種の留鳥の子育てを紹介することで、都市における人と鳥との関係、共生について参加者に知ってもらう機会にすることができたと思います。

観察種:カルガモ、キンクロハジロ、カイツブリ、キジバト、カワウ、ゴイサギ、アオサギ、コサギ、バン、オオタカ、カワセミ、コゲラ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヤマガラ、シジュウカラ、ツバメ、ヒヨドリ、エナガ、メジロ、ムクドリ、シロハラ、カワラヒワ、シメ、クロジ、カワラバト、ホンセイインコの27種

Photo by Ryuichi Tamura, Eiko Ozawa, Nao Ogikubo

Special Thanks to Kowa Optical Products Co.Ltdhttp://www.kowa-prominar.ne.jp/product/#index_binoculars

タイトルとURLをコピーしました